しゃれこうべ温泉

 という場所に泊まるお話であった。


 『いい温泉だから。この温泉がアレな昨今で、ホンモノだし。秘湯中の秘湯だから。』と、アツく語る友人様。駅から『何時間歩かすねん。』という距離を経て、森を抜けたところに開けた風景は断崖絶壁の茶色い壁である。

 『どこにあるんだ、その“しゃれこうべ”さんは。』とキレ気味に言うと、友人様はナナメ上方を指差していた。その絶壁の頂上に位置し、所々にがけ崩れの後が見られる岩肌が作る“プチ山脈”の中央に“それ”はあった。ふもとから見る巨大な岩の形は、まさに骸骨。ショッカー等の悪役が根城としていそうなツラ構えである。

 『で、あの危険地帯に行くのはいいさ、もうね。で、肝心の温泉があんな高いところ、しかも温泉どころか水の溜まる場所も無いんじゃないの?』と問いかける。行けば解るということで、フラフラになりながら崖の頂上へ行く迂回悪路を進み、骸骨さんの頭頂部に着いた。



 骸骨の頭頂部。確かに温泉はあった。そこは下から見上げただけでは判らなかったが、丁度かっぱで言う皿の部分がへこんで温泉を成していた。

 ちょっとだけ感動した。