電車のアナウンスが間違えていた。

 『お出口、右側です。』を、『お出口、左側です。』と言っていた。事実、電車の降り口は右側であった。


 こういう事態は想定していたりする。妄想癖のある僕は、『間違いアナウンス』を常々待っていたわけだ。今日それに出会った。本来であれば、歓喜するところだろう。


 しかし、思ったよりも面白い事象ではなかった。なかった事に愕然とした。



 なんで?というモヤモヤ感を持ちながら駅を離れ、帰り道にある看板に目がいく。『パチンコ』の『パ』の字が消えかかっていた。


 こっちの方が断然面白い。下品だが「面白レベルの基礎点数が違う」為、下品な分の減点しても『パ』ぬき『パチンコ』の方が面白い。



 パチンコの方は一枚絵の事柄でありながら、ストーリーがある。異質の変化もある。出落ちでありながら、その後の展開にも含みを持たせられる。オリジナルな二次創作だって可能だ。


 電車の方は希少な出来事ではあったが、前後関係や人間模様に不足していた。

 車掌の声が裏返るとか、左右逆と気づいた乗客がピンヒールでアイススケートばりのターンするとかあれば、まだ笑えたかもしれない。


 しかし、全くのノーリアクション。受け手でもある乗客に委ねる分、このプロットは弱かったのであろう。解は数とバリエーションだろうか。